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煎茶の名産地である静岡県

◎お煎茶コラム



煎茶の名産地 静岡



静岡県は言わずとも知れた日本随一のお茶どころ。
全国の茶園面積の40%、荒茶産出額の35%を誇ります。

一口に静岡茶と言っても地域ごとに多種多様で、川根や天竜などの山間地域では山間部特有の霧によって甘みの強いお茶が、牧之原台地周辺の平野部では苦渋みの少ない深蒸し煎茶が生産され、他にも特色あるお茶が多数産出されています。


日本三大銘茶の川根茶



川根地域にお茶作りが伝えられたのは1240年代。
1241年に聖一国師が、宗から持ち帰った茶種の栽培を阿部川流域で始め、その後大井川流域に広まったと言われています。

1600年代には坂本藤吉が近江の国から優良種子を取り入れたり宇治の製茶法の伝習所を作るなどし、今日の川根茶の発展の礎となりました。

静岡県のほぼ中央に位置する川根本町は、周辺を山々に囲われ、日照時間も短く、昼夜における寒暖の差が大きい地域です。
寒暖の差が大きいと、日中の光合成によって作られた養分を夜間の寒さからしっかり守ろうと茶葉が蓄えてくれます。

こうした気候条件で育つ茶葉は他地域のものより薄く柔らかいのが特徴で、酸化を止める蒸熱時間も短く済み、優しく揉み上げるため形が細く濃青緑色をした針状の煎茶に仕上がります。

静岡では深蒸し煎茶も多く生産されていますが、川根茶は基本的に普通煎茶で茶葉は形が崩れていないため粉が少なく、淹れると澄んだ黄緑色をした水色の煎茶になります。

味は旨み・甘み・渋みが程良く調和した、香味をしっかりと味わえるのど越しの良い煎茶で、蒸熱時間が短いため煎茶本来の爽やかな香りが楽しめるのも魅力です。


静岡県を代表する本山茶(ほんやまちゃ)



本山茶は川根茶と並んで静岡県を代表する歴史ある煎茶で、静岡市を縦断する安倍川とその支流の藁科川流域で生産されています。

川を囲む山々に作られた茶園は、しっとりと川霧を抱き、茶葉に降り注ぐ太陽の光を柔らかなものにしてくれます。
また川を抱く山々はミネラルをたっぷりと含む土壌になり、さらに山間部の寒暖の差が、柔らかく鮮やかな緑色の良質な茶を育んでくれます。

その茶を原料とした煎茶は、細撚りで茶葉が剣先まで綺麗に伸び、色艶の美しい濃緑色の茶葉は目にも美しく仕上がっています。
また山間部特有の上品な清々しい香りで、しっかりとした旨味とほのかな甘さが調和した中に爽やかな渋みがあります。

「静岡本山茶」の名が誕生したのは明治時代。
その頃は煎茶の輸出が進められ、静岡の各地域で煎茶生産が増加していきました。

安倍川・藁科川流域で作られる煎茶はかつて「安倍茶」と呼ばれていましたが、この地で産出される煎茶を他産地の煎茶と区別するために、茶農家の築地光太郎が「静岡本山茶」と名付け、今日に至ります。

かつて家康公も愛したといわれる伝統ある銘茶です。





広大な牧之原台地で作られるお茶



先ほど、静岡県のお茶生産量は日本一だと言いましたが、その中でも牧之原の収穫量は4分の1を占めています。

牧之原に茶園が生まれたのは1869年徳川慶喜の大政奉還によります。
当時、警護役に就いていたおびただしい数の旧幕臣達が大政奉還と共に任務を解かれ職を失ってしまいます
。 職を失ってしまった彼らは、仕事を得るために刀を捨て、当時新政府が生糸と茶を輸出の目玉にしていたことから、牧之原に茶園を開墾する決意をしたのです。

地元の農民でさえ見向きもしないほどの荒廃地でしたが、粘り強く開墾を続け1873年ようやく初めての茶摘みが行われました。

温暖な気候と日照時間の長さに恵まれ、柔らかい芽でありながら、肉厚に栽培された茶葉は主に深蒸し煎茶として製茶されます。

牧之原の茶は普通蒸しの煎茶にすると苦渋味のやや強い煎茶になってしまうのですが、深蒸しにすることで苦渋味が抑えられた煎茶に仕上がります。
弱点を補う形で作られた深蒸し煎茶ですが、今や静岡を代表する煎茶として広く親しまれるようになりました。

牧之原の茶葉は深蒸し特有の細粒系で色は浅緑色です。
香りはやや薄く感じられますが、口に含むと旨みとコクがしっかりとあり濃厚な味わいです。
また、全体的にまろやかな印象ですが程よい渋みも感じられ、リラックスしたい時にはぴったりの煎茶と言えるでしょう。


最後に



日本一のお茶どころ、静岡県で作られる煎茶をご紹介してきました。

同じ静岡で作られたお茶であっても、山間部と平野部ではできる煎茶も違ってくるのが分かって頂けたかと思います。
ワインや地酒のように飲み比べてみるのもまたお茶の楽しみのひとつです。

産地ごとの特色豊かなお茶をいろいろ試してみてくださいね。



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