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◎お煎茶コラム
煎茶比べ〜産地別〜
ひと口に「煎茶」言っても原料となる茶樹の品種や、茶樹が育った気候風土、または製造法によって味や香りも多種多様。
ここでは産地による煎茶を比べ、その特徴をご紹介していきたいと思います。
産地による特徴を知り、煎茶を選ぶ時や飲む時の楽しみの一つに加えていただければ幸いです。
全国の主な煎茶の産地と特徴
●知覧 (鹿児島県)
鹿児島県のお茶の面積・生産量は、静岡県に次いで日本第2位。
「知覧茶」は地域団体商標制度で認定された地域ブランドのお茶です。
近年は全国茶品評会で日本一を受賞するなど味・品質ともに高く評価されています。
主に煎茶、深蒸し煎茶が生産されており、日本の南に位置する温暖な気候を活かし、全国で一番早い新茶「走り新茶」を出 荷しています。
茶葉は新鮮な濃い緑色で、淹れると若緑色をした美しい水色を楽しめます。
また、南国特有の爽やかな香りとふくよかで濃厚な旨みが特徴の煎茶です。
知覧茶は、鎌倉時代に平家の落人が北部山間地の手蓑(てみの)に茶の栽培を始めたことが起源と言われています。
時を経て、明治五年先人たちが山野を開墾し茶の栽培が本格化されました。
●嬉野 (佐賀県)
嬉野茶は、私たちのよく知る煎茶とは見た目からして煎茶の茶葉の形が違います。
これは一般的な煎茶のようにピンと伸びた形に葉を揉まず、曲玉のように曲がった形に仕上げているからです。(蒸し製玉 緑茶)
この見た目から「玉緑茶(ぐり茶)」と呼ばれており、日本茶としては珍しく、特徴のあるお茶と言えます。
茶葉は一つ一つが丸く、艶がある深い緑色で、香りや旨みが強いのが特徴です。
また、急須の中でゆっくりと開きながら旨みを抽出していいくため、二煎目・三煎目と注ぐたびに味や香り、旨みの移り変 わりを楽しめるお茶としても人気があります。
嬉野茶の歴史も古く、永享12年(1440年)平戸に渡来した唐人が嬉野の不動山皿屋谷に住みついて、陶器を焼くかたわら茶 を栽培し、自家用にしたことが始まりであると伝えられています。
その後1504年、明の紅令民が南京釜を中国より持ち込み釜炒り茶の製法を伝えたことより、嬉野でのもう一つの銘茶である 「釜炒り茶」発祥の地となりました。
釜炒り製の緑茶は摘んだ茶葉を直接直火で炒るため、特有の焙じ香があり、のど越しがさっぱりとしています。
茶葉はやや大きくて丸みを帯び、釜擦り独特の艶があります。
釜炒り製の緑茶は生産量が少ないお茶で、一般に「嬉野茶」という場合は「蒸し製」のものです。
●八女 (福岡県)
八女地方は起伏にとんだ地形で、山間地域では主に玉露が、平野地域では主に煎茶が作られています。
八女の煎茶は、まろやかで甘みが豊か、コクがあり濃厚な旨みを感じられるのが特徴です。 鮮やかな緑色の水色が美しく、爽やかな香りとともに五感で味わえます。
また、八女は煎茶だけではなく高級玉露の産地としても有名です。
八女市星野村や黒木町などの山間地域は気温が冷涼で霧深く、伝統本玉露の生産に適しており最高級の緑茶として高く評価されています。
玉露生産量は全国の約50%を占めており、これは日本一の生産量となっています。
八女茶の起源は、1423年(応永30年)に明の留学より帰朝した僧の周瑞禅師が黒木町での霊巌寺建立に際し、茶の栽培を伝 えたのが始まりであるとされています。
●宇治 (京都府)
鎌倉時代に明恵上人が茶の種を蒔いたことに始まり、室町時代には将軍や大名の茶園が多数作られるなど、伝統ある茶産地 であり、また歴史的にお茶文化の発信地でもあります。
現在もその歴史は受け継がれ、煎茶、抹茶、玉露などが生産されています。
宇治茶の水色は黄金色で、口に含むと少し渋みを感じますが、ほんのりとした甘さもあり、後味が爽やかなすっきりした味わいが特徴です。
香りからは気品漂う上品さを感じられます。
●伊勢 (三重県)
あまり聞き馴染みがないかもしれませんが、実は三重県の緑茶生産は、栽培面積・生産量・生産額それぞれ静岡県、鹿児島県に次いで全国3位となっています。
しかも、品評会では何度も賞を受賞するほどの高品質を誇っています。
新茶の収穫時期は、4月下旬から5月中旬頃。
伊勢茶は二番茶までしか摘採しないことから葉肉が厚く、濃厚な渋みとコクは二煎目・三煎目までも美味しく味わえます。
濃緑色の色つやと青味のある水色で香気が強く、後味にほのかな甘さが感じられるのが特徴の濃厚な味わいの煎茶です。
古文書に西暦900年代(延喜年間)の初め、飯盛山浄林寺で茶が栽培されたとの記録が残っています。
●静岡 (静岡県)
全国の緑茶生産量のうち約4割を担う、言わずとも知れた日本を代表するお茶の名産地です。
川根・天竜・本山(ほんやま)などの山間地は恵まれた気象条件で高品質のお茶が生産され、この地の名を付けた煎茶が販売されるなど茶産地として有名です。
また牧之原周辺では、味の濃いお茶作りを目指し、苦渋味の少ない深蒸し煎茶の製法が開発されました。
静岡茶は、そのほとんどが深蒸し煎茶です。
深蒸し煎茶は普通蒸しの煎茶に比べて形が短くつぶれており粉が多いですが下級茶というわけではありません。
水色は爽やかな濃い緑色で、渋味が抑えられた風味豊かな味と若芽の清々しい香りが特徴です。
静岡茶の歴史も古く、1244年 聖一国師が宋よりお茶の種子を持ち帰り、静岡市郊外の足久保に植えたのが始まりと伝えられています。
明治維新の頃には、徳川藩士などによる牧之原台地の開墾により、日本一のお茶生産地となりました。
●狭山 (埼玉県)
日本三大銘茶としても有名な狭山茶は埼玉県の武蔵野台地で主に生産されています。
ここは茶栽培に適した土壌を持ちますが、茶栽培を行うには冷涼な気候のため経済的北限産地となっています。
通常、他の茶産地では茶摘みは3回行われますが、狭山茶は寒冷地のため2回しか行われません。
寒冷地ならではの越冬茶葉はゆっくりと旨みを増しながら生育し、甘みとコクのある肉厚の茶葉が育まれるのです。
狭山茶は「色は静岡、香りは宇治、味は狭山でとどめさす」と茶摘み歌でも唄われ、深蒸しで甘く濃厚なコクを味わう煎茶として江戸を中心に広まりました。
仕上げ工程では、茶葉を高温乾燥させる独特の”狭山火入れ”を行い、それによって生まれる「狭山火香(さやまかか)」 と呼ばれる強い香りは狭山茶の特徴の一つです。
色・味・香り共に重厚さがあって、しっかりとした味わいの煎茶です。
狭山茶の歴史については諸説あり、はっきりしたことは分かっていませんが、一説には鎌倉時代に京都の高僧である明恵上人が武蔵河越の地に茶の樹を植栽したのが始まりであると伝えられています。
室町時代に入ると大和・伊賀・伊勢・駿河などと並ぶ銘園五場に数えられる茶産地となり、河越茶として親しまれていました。
江戸時代には関東で初めて蒸し製煎茶の製法を導入し、現在のような茶園となり、本格的な茶業としての生産が行われるようになりました。
また、それに伴い生産地域が広がり、「河越茶」と呼ばれていたのが現在の「狭山茶」と呼ばれるようになりました。
主に江戸で取り引きされていた狭山茶は、横浜開港と同時にいち早く輸出されさらなる繁栄をみせました。
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